平成17年度 研究概要 

研究主題 かかわりを通して,自立への基礎を培う
〜自己表現力高める学び合いと評価の工夫〜
研究主題について
- 本主題設定の理由
昨年度公表されたOECD生徒の学習到達度調査(PISA2003)結果からは, ○我が国の学力は,全体として国際的に見て上位。(高1を対象) ○ただし,読解力など低下傾向にあり,世界的トップレベルとはいえない状況。 ○授業を受ける姿勢は良いが,学ぶ意欲や学習習慣に課題。 という報告が出されている。 また,国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2003)結果からは, ○我が国の児童生徒の学力は,国際的に見て上位。ただし,小学校理科,中学校数学は前回より得点が低下。(小4,中2を対象) ○学ぶ意欲や学習習慣に課題。 ○テレビやビデオを見る時間が長く,家の手伝いをする時間が短い。 という報告も出されている。 そんな中で新学習指導要領の内容が3割減等の結果として,保護者の中には「学力低下」の不安が募っている。子どもたちにいかに「確かな学力」を身につけていくかが,学校の急務な課題となっている。 また,マスコミに取り上げられる不登校やいじめ,学級崩壊などの問題が深刻化するなかで,私たちは,子どもの心の育ちに目を向けることが大切になってきている。子どもは,人や対象となるものとの関係の中で,様々な体験を通して数多くのことを学び,心を成長させていく。家庭・家族,学校・教師やクラスの友達,地域・地域の人たちなどとかかわりながら自分や他者を見つめ,人間性や社会性を伸ばしていく。 ところが,子どもを取り巻く環境は,情報化,都市化,核家族化,少子化などによって少しずつ変化をしてきている。私生活を大切にする風潮が強まり地域社会とのつながりが希薄になってきている。そのため,子どもたちは家庭で過ごすことが多くなり,かつてのように自然発生的に異年齢の集団の中で遊ぶことがほとんどなくなった。子どもの人間関係の広がりや深まりが制限されたことにより,自分の思いを伝えたり,人の思いを感じ取ったりする力が弱まったことが,今日の様々な問題を生み出す要因になっているのではないかと考えられる。 そこで,本校では,前述した「家庭」「家族」「友達」「地域の人たち」とのかかわりだけではなく,社会の変化に対応した「環境」「文化」「国際」とのかかわりの視点から他とのかかわりを見つめ,人間としてよりよいかかわり方・生き方を育てることにより,21世紀に生きる人間として自立していける基礎を培いたいと考え,本研究主題を設定した。
- めざす「自立」とは
子どもたちは「ひと」「もの」「こと」とのかかわりの中で育つ。問いが生まれたり,心が揺さぶられたり,探求を深めたりしながら自分を作り上げられるのも,すべてはかかわりからである。そして事象との出会いから生まれた思いや願いはその子のこだわりとなり,自分の考えをより確かなものにする力となる。さらに学習を通して生まれた自らに対する信頼や肯定感は,自己の高まりや個性の自覚につながり,ひいては生きる力の高まりへと発展していくのである。 本校では「かかわりを通して自立の基礎を培うこと」で,生きる力が育まれると考えている。ここでの自立とは,「他人に依存せずに,自分の力で自分の信念に従って生きていこうとする姿」と定義されるものである。それはけっして他者とのかかわりをもたないということではなく,むしろ「他者との様々なかかわりを通して,一人の人間として,かつ学習者として個性を生かしながら生きていること,そして社会的な場で,自分・個性を発揮できること」を目指している。 自立のより詳しい捉え方については学習指導要領「生活編」をもとに,以下に自立の3側面としてまとめる。 @ 自分にとって興味・関心があり,価値があると感じられる学習活動を進んで行うことができるということであり,また自分の思いや考えなどを適切な 方法で表現できる。 (学習上の自立)
A 基本的な生活習慣や生活技能を身に付けて,身近な人々,社会及び自然などと適切にかかわることができるようになり,自らよりよい生活を創り出していくことができる。 (生活上の自立) B 自分のよさや可能性に気づき,意欲や自信をもつことによって,現在及び将来における自分自身のあり方をいっそう強化していくことができる。 (精神上の自立)
- 副主題について
授業中,何となくは分かっているがうまく自分の言葉で伝えられない子,発表できない子,けんかをしてもうまく自分の主張を言えないためにすぐに手が出てしまう子などの実態を見ると,人とかかわりながら自分づくりをしていくために「自己表現力」は欠かせないものだと考えられる。 栗林の子どもたちが,友達や周りの人やものと上手にかかわりながら社会性を培いつつ自己実現を図っていくために,「自己表現力の育成」を最重要課題と捉え,研究の柱に置くことにする。自己表現(力)及び自己表現力を高める子どもの姿については,以下のように考えている。
- 自己表現および自己表現力について
自己表現とは,自分の思いや考えを伝えることである。自分の知っていることや考えていること,あるいは自分の気持ちなどを他者に表現することである。しかし,ただ自分の思いや考えを主張することのみが自己表現であるとはとらえたくない。相手の考えや思いを汲み取って行動したり表したりすることも含めて自己表現であるととらえたい。したがって,相手の意向を理解し,自分の思いや考えを伝えることが自己表現であると考える。 主テーマ「かかわりを通して,自立への基礎を培う」に迫るためには,自分の気持ちや考えを伝えたり,自分の意志を示したりする自己表現力の育成が必要だといえる。自分の力で自分の思いや考えを表現できることを通して,他と主体的にかかわり,共に学び合い,自立へと基礎を培っていけると考える。