平成10/11/12年度 文部省・香川県教育委員会・庵治町教育委員会指定

文部省へき地高度情報通信設備(マルチメディア)活用方法研究開発事業(10年度)

庵治町立庵治第二小学校庵治町立庵治小学校   
 
1 10年度研究主題
 自分の思いを進んで表現し,互いに高め合う児童の育成
  −テレビ会議システムを活用し,コミュニケーション能力を育てる学習指導の工夫− 
 
2 研究主題のとらえ方
 (1) 自分の思いを進んで表現することについて
価値ある体験は,「なるほどそうだったのか」といった納得感や実感をもったり,「どうしてかな?」という疑問を生み,次の学習へとつながっていったり,「発見したことや気づいたことをみんなに知らせたい!」といった表現への意欲をかきたてたり,子どもたちに様々な思考や判断・表現を促すものでなければならない。様々な体験が,「よかった。」「楽しかった。」というだけで終わることのないようにするには,体験した内容や自分の思いを文章や絵,言葉や映像で表現することが大切になってくる。子どもは表現することを通して,自己の内面にある思いや願いを表出し,自己の存在を確認できる。また,自分の考えなどをいろいろな形で表現し,友達と交流したり,分かり合いをしたりすることによって,より明確にし,考えを整理しつつ,理解を深めていくこともできる。体験と表現の一体化を図りつつ,創意ある学習活動を展開していきたいと考えている。
子どもの表現力を高める手段として,テレビ会議システムの活用を考えている。テレビ会議システムを活用した学習では,常に相手意識をもつことができ,「相手の友達に分かるように伝えたい。」,「相手の友達が言っていることを分かりたい。」という意識が生まれ,交流することによって,「もっとくわしく調べて伝えたい。」「もっとくわしく知りたい。」という思いに高まっていくのではないかと考えている。ここでは,学んだことを相手に分かるように伝えたり,相手からの質問に的確に応答できたりする力(表現する力)と情報を収集したり作り上げたりする力(発信する力)を高められるような学習形態の工夫を行う必要がある。
 
 (2) 互いに高め合う児童とは
互いに高め合う児童とは,主体的な学習活動の中で友達の学習方法や考え,発想のよさに気づき,ともに認め合いながら自己を高めていくことのできる児童である。テレビ会議システムの特徴は,情報の融合性と学習者の相互交渉性にある。テレビ会議システムは,空間の異なる学習者同士の双方向のコミュニケーションを可能とする交流学習を成立させる。交流学習では,他校の友達と交流することで,児童の考えが広がったり深まったりするだけでなく,自分の情報や考えを伝えるための工夫や話し合いの工夫を考えるなどのコミュニケーション能力を高めたり,必要な情報を取捨選択し,必要な情報を自分たちの学習に活用する力を身につけたりすることもできると考えている。
 
 3 研究仮説

・ テレビ会議システムを有効に活用し,他地域との交流学習を進めることによって臨 場感ある学習ができ,児童の学習意欲を高めることができるであろう。
・ 様々な学習の場面において,テレビ会議システムを有効に活用することで,児童の コミュニケーション能力が高まり,多様な思考力や表現力を培うことができるであろ う。
 
 
 (1) テレビ会議システムの有効な活用について
   @ 総合的な学習の中での活用
実践校・協力校ともに総合的な学習の研究を進めており,その学習の中で,他地域の様子について情報を交換したり,お互い話し合ったりすることで,児童の考えが広がり,深まることを期待する。また,学習の成果をお互いに知らせ合うことにより,学習に対する意欲を継続させる効果を期待している。                
   A 単元交流
一単元の学習内容や学習進度を同一にして行う。単元の導入・展開・まとめの中でポイントを決め,思考力の多い時間・表現力を育てる時間等,学年の発達段階を考慮して位置づける。共通の学習を進めるので両者が同じ目的意識をもって学習に参加でき,お互いに意見を聞いたり発表したりすることを積み重ねることにより課題解決につなげていく。
   B 単位時間交流
実験を伴う授業(理科や算数),多様な考え方がでてくる授業(国語・道徳・学活)などでの活用が考えられる。また,算数の時間の複式学習解消のためにも効果的に活用できるのではないかと考えている。                   
   C 広域交流
「へき地学校高度情報通信設備(マルチメディア)活用方法研究」の指定校が増え,こねっとプラン参加校,フェニックス導入校も年々増加している中で,今後はより幅広い学習の展開を行い,ネットワークを全国へ世界へ広げていくことが可能となった。新しい考えにふれることで視野を広げたり,他の地域の良さを知ることで新たに自分の住む地域の良さを見直したりすることができると考えられる。       
 
 (2) コミュニケーション能力の育成
テレビ会議システムを利用しての学習では,相手に分かるように伝えること(情報の作り手としての能力),相手の情報を正しく理解しようとすること(情報の受け手としての能力),情報を自分の課題を解決していくのにどう利用するか(情報の使い手としての能力)が要求される。この3つの力(コミュニケーション能力)を育てられるような学習指導の工夫や支援・援助の在り方を探ることが課題である。
 
 (3) 多様な思考力や表現力を培う
テレビ会議システムを活用した学習では常に相手意識を伴うため,情報をわかりやすくまとめようとしたり,自分の思いや考えを的確に話したりすることが必要になってくる。また,意見交換や質疑応答などの場面では,スムーズに会話を進めるために,瞬間瞬間の判断力・思考力が必要とされ,自分の思いや考えを相手に分かりやすく伝えるためには,豊かな表現力が必要になってくる。この二つの側面から,テレビ会議システムの利用によって,多様な思考力や表現力を培うことができるのではないかと考えている。
 
 4 研究内容
 (1) テレビ会議システムを活用した学習指導の工夫
  @ 授業形態の工夫
各教科,道徳,特活の特性を考えながら,どのような授業の形態が有効であったか,どのような学習効果があったのかを,実践の中から見つけていく。一方向の情報伝達型や二方向の情報交換型だけでなく,より高いレベルの学習効果が得られると考える双方向の情報交換型の授業形態を増やしていく必要がある。
  A 授業展開の工夫
1単位時間の中でどのような場面でテレビ会議を行うのが効果的であるかなど,学習展開の工夫を行う。
  B 話し合いの場の設定
多人数と少人数,それぞれのよさを生かしながら,自分の考えが広がり,深まるにはどのような話し合いの場を設定し,どのような方法がよいか考える。
 
 (2) コミュニケーション能力の育成
  @ 情報の作り手としての能力
相手に分かるように話したり,相手に分かりやすく表現したりする力を身につけさせいけるような学習指導の工夫を探る。    

  A情報の受け手としての能力

相手が伝えようとしていることをよく聞き,それを正しく理解しようとする力を身につけられるような支援や援助の在り方を探る。
  B 情報の使い手としての能力
テレビ会議システムで様々な情報を交換する中で相互交信の能力を高めるとともに,情報を取捨選択しながら,自分の学習に活用していけるような力を身につけさせるような学習指導の工夫や援助・支援の在り方を探る。
 
 5 研究の進め方
 (1) 庵治小・第二小交流学習年間計画の作成                 
   各クラス学期2回程度の授業実践を行う。(年間80時間程度)
 
 (2) 研究授業の実施
 授業後の合同授業討議会を行う。
 
 (3) 合同現職教育・マルチメディア研究推進委員会の実施
   ・合同現職教育を行い実施計画を立てる。(5・8月)
   ・研究推進委員会は研究内容や研究方針について話し合い,全体への共通理解を図る。
 
 (4) 学習記録用紙の記入
   実践した授業の記録簿としてまとめ,機器操作,授業形態,成果や課題など,他の教職員の参考となるよう記録を残す。
 
 (5) 研究のまとめ
   2月に研究のまとめを行い,それをもとに次年度の計画を立てる。
 
 (6) 協力体制
   日課表の調整・・・3〜5校時までを同一時間帯にする。

6 第1年次(10年度12月〜3月)の成果と課題
(1) 成果
○ 児童の学習態度から
・相手を意識し,大きな声で話そうとする態度や画面を見てしっかり聴こうとする態度が身に付いてきた。
・テレビ会議システムを利用した学習においては学習意欲が高く,進んで学習に取りめていた。
○ 学習形態から
・総合的学習のまとめの段階において,「調べたことや考えたことを相手校に発表しよう。」という目的意識をもたせることで児童の学習意欲が高まり,学習効果が上がった。また,発表を聴く方においては,多様な考え方にふれることで視野が広がったり,発表の仕方や表現の方法の工夫などについて学んだりすることができた。 
・社会科や算数では,同一内容の交流学習を行うことで多様な考え方にふれることができ,学習内容に深まりがあった。特に算数では複式学習の解消という面において有効であった。
・広域交流学習で異なる環境の子どもたちと交流することができ,児童の視野が広がった。
○機器操作の面から
・書画装置やパソコンの画像,VTRを効果的に活用することで,児童の興味関心を高めることができる。特に書画装置は児童が調べたことを発表する際には,有効に活用できた。
・使用するごとに機器操作に慣れ,教師一人でもカメラや他の機器操作ができるようになってきた。
○ 全体を通して 
・テレビ会議導入前は教室内の友達だけの学習がすべてであったが,テレビ会議を通して交流を進めることで,いろいろな友達がいること,いろいろな考え方や見方があることが分かってきた。
・相手校の教師と協同で授業をつくっていこうとする意識が生まれてきた。
・児童の思いや願い,児童の反応を考えた授業構成を工夫しようとしてきた。
 
(2) 課題
○児童の学習態度から
・相手校の先生や友達から質問や意見を求められた時には,積極的な反応が見られなかった。即時に判断し表現する力や思ったことを発言する積極性を身につけられるように実践を積んでいく必要がある。
・もっと積極的な学習態度をめざすために,話し方,聴き方,話し合いの仕方など日常生活においても訓練を積んでいく必要がある。 ○ 学習形態から
・一方向の情報伝達型,二方向の情報交換型の授業形態が中心であった。双方向の情報交流型の授業形態を増やしていかなければならない。
・総合的学習のまとめとして発表形式の学習形態を行ってきたが,テーマが異なるために発表を聴く方にとっては共通の課題としての深まりがない授業もあった。総合的学習や単元交流などにおいて,児童が共通の課題をもって学習に参加できるような学習内容を増やしていきたい。
○ 効果的な機器活用の面から
・教師が機器操作を担当することが多かったが,高学年おいては児童による操作も可能である。書画装置やカメラ操作など場合によっては児童に任せ,そうすることで授業を自分たちでつくっていっているという意識をもたせたい。
・ハンドマイクを使用しないと声が聞きとりにくいことがあった。調整したことにより少しは改善された。
○ 協力校の連携から
・総合的学習,単元交流の学習では,打ち合わせを綿密に行う必要がある。テレビ会議による打ち合わせなどの時間をどのように確保していくかが課題である。
7 第二年次研究計画
授業計画 合同研修等 運営委員会・推進委員会 備考
・総合的学習の計画立案 ○テレビ会議機器操作についての合同研修(テレビ会議) ・研究主題,方針等の作成(推進)
 



 
・授業実践(計画に基づいて)


 
○合同現職教育(庵治小)
・研究主題,研究方針等について確認
・1学期の授業計画について話し合い
○研究授業(6年総合)
・合同現職教育の持ち方について(推進)


 




 
・授業実践(計画に基づいて) ○庵治小6年の大島訪問
 

 


 
・授業実践(計画に基づいて)

 
○研究授業(5.6年総合)
○研究授業(1.2年生活)
 
・1学期の実践のまとめと研究方向の確認(推進)
・運営委員会の開催について(推進)



 





 






 
○合同現職教育(第二小)
・講義「メディア教育の現状と課題」
・運営委員会で協議したことの報告
・1学期の研究評価と2学期の研究方向について
・2.3学期の授業計画について
○先進校訪問(土庄小学校)
・第1回マルチメディア運営委員会開催
・合同現職教育について(推進)




 






 
・授業実践(計画に基づいて)
 
・研究紀要のまとめ方について(推進)
 
10
 
・授業実践(計画に基づいて)
 
○先進校視察(県外)
○木田郡視聴覚教育部会で実践発表

 


 
11

 
・授業実践(計画に基づいて)

 
○研究授業(5.6年総合)
○全国視聴覚教育研究大会(高知)参加
○全国教育工学研究協議会全国大会(岡山)参加
・研究紀要の内容について検討(推進)

 



 
12

 
・授業実践(計画に基づいて)

 


 
・2学期の実践のまとめと研究方向の確認(推進)
・研究紀要の役割分担(推進)



 

 
・授業実践(計画に基づいて)
 
○研究授業(3.4年社会)○先進校視察(県外)

 

 


 
・授業実践(計画に基づいて)

 
○合同現職教育(庵治小)
 ・実践発表

 
・研究紀要作成(推進)
・研究のまとめと次年度の研究計画の立案(推進)



 
・授業実践(計画に基づいて)
・研究報告書作成(推進)
・運営委員会の開催について(推進)
・第2回マルチメディア運営委員会開催