◎ 青松園ケースワーカーKさんとの学習会

  ケースワーカーは主に入所者とその家族とをつなぐ役割や入所者の相談員としての役割をしている。十数年この仕事に携わってきたKさんは,入所者一人ひとりの事情に精通しており,最も入所者に身近な職員の一人である。そして,彼はその仕事で経験したことを,園外からの訪問者に話したり,さまざまな場所で講演したりしながら,ハンセン病問題啓発のために活動してきた。
Kさんとの4回の学習会では,入所者やその家族に対する差別の話などの入所者の辛かった過去の話や青松園での苦しい生活の話などを聞くことができた。学校でも差別され,学校へ行けなくなった入所者の話,家族みんなが差別され一家離散してしまった入所者の話,家族を守るために自分の存在を消してしまった入所者の話,社会復帰しても自分の過去を秘密にし続けることが辛かったという入所者の話,自分の兄弟や子にさえ病気のことを内緒にしていたという話など,どれもが差別の現実を如実に表した話で,子どもたちの心には重い話だった。
 最後の学習会では,青松園で入所者との関わってきた中で考えてきたことやハンセン病に対する差別や偏見の解消を願って活動してきた思いを子どもたちに語ってくれた。はじめて療養所を訪れた時に,「みなさんを守るために自分たちが犠牲になっているんだ。」という入所者の話を聞いて,守られている自分がそれを知らないことにショックをうけ,それが今も心の底にあって療養所で働く心の支えとなっているという話。入所者一人ひとりの生きてきた姿にふれることで自分が人間として成長してきたという話。ハンセン病の病気の特徴や歴史を知るよりも,病気で苦しみながらもこれまで懸命に生きてきた入所者のことを知ってほしいし,その人たちの生き方に学んでほしいという話。「らい予防法」が廃止され,療養所が本当の意味で開かれるようになった今,ハンセン病のことを,入所者のことを島外の人に伝えていきたいという話。どれもが子どもたちの心に残り,「もっともっと入所者のみなさんのことを知りたい。」,「自分も大島で学んだことを伝えたい」という思いを強くした。

◎ 感想 (思ったことや考えたこと)

2学期のふるさと大島の時間に,ケースワーカーのKさんのお話を3回聞くことができました。1回目の話は,大島青松園の歴史や入所者のみなさんの生活についてでした。2回目は大島青松園やハンセン病に対する差別についての話,3回目は入所者のみなさんに対する差別や家族に対する差別についての話でした。ぼくが,その中で印象に残ったのは,昔の大島は今のような設備や医療がしっかりとしてなく,看病されたり,治療されたりするのではなく,ただ療養所にいれられていただけであったという話でした。そのため,1年間にたくさんの入所者の方がなくなったことがあったそうです。また,大島は昔から水に苦労していたこともわかりました。入所者のみなさんも井戸をほり,時間を決めて飲むなど大変な苦労があったようです。
 2回目の話で印象に残ったのは,入所者のみなさんが受けてきた差別についてのものでした。子どものときに発病し,ひどい差別のために学校にもいけず,仕方なく大島にきたという入所者の話,青松園を退所し社会復帰しても,差別をおそれて大島青松園にいたことやハンセン病にかかったことをかくしとおしていかなければならないかったという話でした。その話を聞いてハンセン病に対する差別は本当に厳しかったんだなあと強く思いました。
 3回目のお話で印象に残ったのは,ここの入所者のみんなは病気になったと思ったとき,一度は自殺を考えたということと,その人の家族もみんな自殺を考えたという話でした。また,入所者の家族は,その人が病気になったことをずっと隠しつづけたり,自分の子どもや兄弟にもないしょにしているという話を聞いて,ハンセン病に対する差別は,病気になった人だけでなく,その人の家族までも苦しめるものだということがよくわかりました。
 ぼくは,Kさんの3回のお話を聞いて,人を自殺に追いやったり,家族が離ればなれになってしまわなければならないような,差別は絶対に許せないということを一番に思いました。ぼくは,そんな差別は絶対しないし,させてはいけないものだと強く思いました。    (6年男子)
Kさんとの4回目の学習会は,「ハンセン病に対する差別や偏見をなくすためにはどのような考え方が必要か。」を知るために話を聞きました。Kさんは,「ハンセン病に対してまちがった考え方をしている人に,ハンセン病のことを正しく理解してもらいたい,ハンセン病で苦しんできた入所者のみなさんのことを知ってもらいたいと思いいろいろなところで話してきた。」と話してくれました。
 Kさんの話で心に残ったのは,ハンセン病の歴史や差別について知るよりも,病気で苦しみながらも懸命に生きてきた入所者の人たちのことを知ってほしい。」という話でした。Kさんも多くの入所者のみなさんとかかわる中でいろいろなことを学んできたと話してくれました。私ももっと入所者のみなさんと交流したいと思いました。次に心に残ったのは,「人権の学習は,差別はいけないということだけを考えるのではなく,人として生きるために必要な学習だ。差別について知識として知るだけでなく,その学習で思ったこと,考えたことをこれから生きていく中で大切にしていってほしい。」という話でした。私もそう思いました。また,ものを見るときには,「いろいろな角度から見ること大事。」という話も心に残りました。ハンセン病も偏った考え方が原因で差別が起こりました。自分の生活の中でも,あの人は悪い人だ,あの人は嫌いだときめつけないでいろいろな見方でその人のことをみたいと思いました。
 私は,1年間のハンセン病問題学習で学んだり,ふれあい学習で入所者のみなさんと交流しながら学んだことや考えたことをわすれないようにしたいと思います。(5年女子)